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2019-07-30ニュース

AI/MLに基づくプログラム医療機器に関する新たな規制ポリシーとFDAの対応

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    医療機器に用いられるAIや機械学習(ML)には、新たな規制の枠組みが必要となります。

     

    医師であるScott Gottlieb氏が、先日、米食品医薬品局(FDA)長官を辞任していますが、FDA長官就任後の彼の仕事ぶりは最後まで変わらず、公衆衛生において最も困難な問題の解決に積極的に取り組んでいました。

     

    彼のアジェンダには、医薬品開発の政策改革に加えて、医療機器テクノロジー(medical device technology)の向上の提唱が掲げられていたのです。辞任の数日前にも「プログラム医療機器」(Software as a Medical Device, SaMD)としての人工知能(artificial intelligence, AI)や機械学習(machine learning, ML)の審査及び規制に関する計画についてのディスカッションペーパーに着手していることが発表されています。

     

    「私は、人工知能がいつの日か、今は難しいとされる健康障害の発見と治療にきっと役立つと考えています。例えば、人工知能により、早期の疾患検出が現時点での我々の限界をはるかに超え、かなり早期に可能となるかもしれません。」と、Gottlieb氏は April 2019 News Release で述べています。

     

    規制環境の近代化に向けた活動の一部として、Gottlieb氏は急ピッチで進む革新の進展に遅れないよう、既存の当局を新たな方法で用いる予定であると共に、医療機器製品の安全性及び有効性に関するFDA規格の遵守についても断言しています。

     

    医療機器としてのソフトウェア向け規制ガイダンス

     

    ソフトウェアが単体で医療機器として機能するようになり、こうしたテクノロジーを規制する新たなポリシーの必要性が生じています。FDAは、ソフトウェアに関する規制プロセスを明確にする目的で、2017年ガイダンス "Deciding When to Submit a 510(k) for a Software Change to an Existing Device" を立案しました。ガイダンスでは、ソフトウェアを以下の電子指示(electronic instruction)として定義しています。

     

    ○ 医療機器のアクションまたはアウトプットをコントロールするもの

    ○ 医療機器へのインプットあるいは医療機器からのアウトプットを提供するもの

    ○ 医療機器のアクションを規定するもの

     

    ソフトウェアは、さまざまな理由から定期的に更新が行われます。規制上、市販前申請を必要とするソフトウェアの変更(software modification)は、通常発生頻度が高くありません。FDAガイダンスでは、市販前承認申請(PMA)の対象となるソフトウェアの変更カテゴリーは次のとおり示しています。

     

    ○ 新しいリスクをもたらす変更や既存のリスクが重大な損害をもたらすような変更

    ○ 重大な損害を防ぐためのリスクコントロールの変更

    ○ 機器の臨床機能または機能の仕様に大きな影響を与える変更

     

    AI/MLベースSaMD はゲームチェンジャー

     

    AI/MLテクノロジーの中核を成すものは、学習しデータに従ってアクションを起こし、受信したデータに基づくアウトプットを提供するアルゴリズムです。AI/MLを搭載したプログラム医療機器の中には、使用を通じて継続的に学習し、既定の学習プロセスを使用して、絶えず性能が変化するものもあります。プラス面でな、疾患の検査能力や治療法の提案等、医療セクターではすでに期待されるテクノロジーとなっています。

     

    AIはムービングターゲットである

     

    AI/MLベースSaMD の監視に伴う課題は、その柔軟な機能を取り巻く規制体制の策定にあります。FDAは、AI/MLテクノロジーが反復性、自律性及び適応性に長けている点を指摘しています。また、アルゴリズムの中の「学習」プロセスが実際の使用中に発生するため、変更内容はSaMDがユーザーの手に渡ってからでないと認識できない点も指摘しています。したがって、時々刻々と変化しうるAI/MLアルゴリズムでは、一定のインプットに対し初期の承認を得たアウトプットとは、全く異なるアウトプットを生成する可能性があります。

     

    医療機器規制に対する従来のパラダイムは、この種のテクノロジーに向けて設計されていません。そこでFDAは、急速な製品変更サイクル及び AI/MLベースSaMD の活用を促進するうえでは、Total Product Life Cycle(TPLC)という規制アプローチが必要であると判断しました。TPLCアプローチでは、市販前の開発から市販後の性能までを一連のパッケージとしてソフトウェア製品の評価とモニタリングを行っていくことが可能となっています。

     

    FDAの提案:次世代へ繋ぐ

     

    既存の当局を新たな方法で用いるというGottlieb氏の先の声明の通り、FDAは国際医療機器規制当局フォーラム(International Medical Device Regulator's Forum, IMDRF)、デジタルヘルスソフトウェア事前認証プログラム(Digital Health Software Precertification, Pre-Cert)、及び現行の510(k)、De Novo、PMA経路等の既存の規制慣行に基づいた枠組みを提案することによって、考察を開始しています。

     

    これらすべての医療機器規制慣行の共通する重要な側面は、性能(performance)、有効性(effectiveness)及び患者の安全性(patient safety)です。AI/MLベースSaMD を取り巻く規制環境を土台から作り直すのではなく、FDAは既存のアプローチを用いて、絶えず性能が進化するテクノロジーにきめ細かく対応するとしています。並行して、当局は品質及びオーガナイゼショナルエクセレンス(organizational excellence)の文化より導き出される安全性と有効性を依然として強調しています。

     

    AI/MLベースSaMD に起こり得る変更は、数多想定されます。市販前審査が必要ない変更も一部ありますが、多くの場合は必要になるというのがFDAの予想です。市販前審査の対象となる変更には、アルゴリズムアーキテクチャの変更や新しいデータセットに基づく再トレーニングが必要となる変更が含まれます。市販前申請が必要となり得る変更は、次の3つのカテゴリーに分類されています。

     

    ○ 性能Performance)- 臨床上及び解析上の変更

    ○ 用いるデータInputs)- アルゴリズムに用いられるデータの変更とSaMDアウトプットと臨床的な関連性を含むもの

    ○ 使用目的Intended use)- SaMDにより提供される情報の重要度の変更、例えば診断や治療の変更、臨床管理の方法や対象ユーザー、疾患または健康状態の特定方法の変更

     

    新しい規制体制で注目すべき点

     

    AI/MLベースSaMD に対するFDAのTPLCがまだ提案段階である一方で、FDAは、テクノロジーに対する規制ポリシーの開発に目覚ましい進捗を遂げてきました。FDAが取り組むポリシーの中でも、アルゴリズムの変更に関する以下のポリシーに医療機器メーカーとしては着目したいところです。

     

    ○ 予め設定された性能目標に従って実装されていること

    ○ 既定のプロトコルに基づいていること

    ○ AI/MLベースソフトウェアの性能、安全性及び有効性の向上に関与するプロセスを使用してバリデートされていること

    ○ リアルワールド環境におけるパフォーマンスのモニタリングが含まれていること

     

    CDRH再編成によるテクノロジーの高度化への対応

     

    歴史的には、医療機器・放射線保健センター(Center for Devices and Radiological Health, CDRH)は、市販前審査から市販後調査までの医療機器ライフサイクルのけるステージ別にオフィスが分けられていました。このアプローチによって、特定の規制関連職務に特化する担当者が育っていったのです。しかしながら、専門グループはサイロ化され、賓汁や安全性及び有効性を監督する他のグループと、製品ライフサイクルを通してほとんど接触がない状況でした。

     

    この点を解決するために、CDRHは組織の再編成を実施し、共同作業性を高め、将来的な革新と規制ニーズに、適応力のある迅速な対応が可能となる体制を整えています。TPLCの一環として、FDAは4つのオフィス、つまりコンプライアンス、デバイス評価、サーベイランスとバイオメトリクス、及び体外診断用医薬品 - を統合し、Office of Product Evaluation and QUality(OPEQ)と命名しています。OPEQは、製品ライフサイクル全体を通じて、デバイスの品質及び安全性に対する更なる統合化を図るアプローチの確立を目指します。

     

    結論

     

    人工知能及び機械学習は、ヘルスケアテクノロジー及び医療提供の転換の方向性を決定する重要な推進力となっています。疾患検出、診断及び治療における精度が新たなレベルへと発展することを約束する一方で、品質、安全性及び有効性がイノベーションと足並みを揃えて行くことが重要となります。

     

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