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2019-05-15サービス

ホワイトペーパー : Do I Need to Validate?

  • バリデーションは必要か?

    情報に基づいた意思決定を行うための4ステップ

    By Erin Wright

     

    ソフトウェアバリデーションが簡単だという人は誰もいないと思います。相当量のドキュメンテーション、複雑な機能テストスクリプトの作成、胃が痛くなるようなテストプロトコルの実行といった、いわゆる「伝統的な」バリデーションアプローチを受入れるべきといった思想が、皆さんと同様、私にも形成されていました。2年ごと、またはそれ以上の間隔でアップグレードが行われる企業では、この大変な作業が4ヶ月にもおよぶ場合があるのです。

     

    本当にバリデーションが必要なのかという疑念が払拭しきれずにいる場合、バリデーションの手強さというものが倍増してしまいます。これは、バリデーションのプロフェッショナルとしてのキャリアを通じて、常に私の頭に浮かぶ疑問でもあります。情報に基づいた意思決定を行うために、以下に必要な思考プロセスを分かり易く説明したいと思います。

     

    ステップ1:従前規則から始めましょう!

    バリデーションを実施すべきか否かという筆問をクライアントから受けた場合、私は常にバリデーション要求事項のソースを確認します。ライフサイエンス業界では、企業を支配する従前規則から全てが始まります。例えば、製薬企業に対する 21 CFR Part 210 や 211、医療機器企業に対する 21 CFR Part 820 等です。

     

    対照的に 21 CFR Part 11 は規則ではありますが、従前規則ではありません。米国食品医薬品局(FDA)は、従前規則を遵守し、電子記録及び電子署名の使用に関する基準を確立することを目的に、1997年に Part 11 を発行しました。Part 11 自体では、ソフトウェアバリデーションを要求していませんが、Part 211 や Part 820 等の別のルールとの関連から、ソフトウェアバリデーションが必要となる場合があります。FDAは、「従前規則」を米連邦食品医薬品化粧品方、公衆衛生局法及び Part 11 以外のFDA規則で定められる基礎となる要求事項と定義しています。

     

    医薬品、血液及び生物製剤、バイオテクノロジーや医療機器セクターの企業にとっては非常に明白で、従前規則及び Part 11 のソフトウェアバリデーション要求事項の遵守は、必須となります。

     

    ステップ2:ガイダンス文書を確認しましょう!

    FDA規制対象企業は、規制の基本的な解釈となるガイダンス文書も遵守しています。最も幅広く使用されているガイダンス文書の一部を以下にご紹介します。

    • 「General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff」2002年発行
    • 「Guidance for Industry, Part 11 Electronic Records; Electronic Signatures - Scope and Application」2003年発行
    • FDAが採択したICH Q9、2006年6月U.S. Federal Register(米国官報)にて公布
    • 医薬品企業を対象とする医薬品製造品質管理基準(GMP)ガイドラインの一部である欧州連合の「Annex 11: Computerised Systems」

    FDAはガイダンス文書にて、従前規則に従い保管を必須とする記録、或いは電子フォーマット作成・承認されFDAに提出されたものは、21 CFR Part 11 の適用範囲に該当すると述べており、このためソフトウェアバリデーションは必須となっています。

    バリデーションは、その殆どがFDA規則と関係しているにも拘わらず、コンプライアンスが同等に重要となるバリデーション規定を伴う、以下のようなガイドラインも存在します。

    • 医療機器メーカーやそのサプライヤーに特化した国際標準の品質基準であるISO 13485:2016
    • 2008年に発行された製薬業界の「GAMP 5: A Risk-based Approach to Compliant GxP Systems(GAMP5; コンピュータ化システムのGxP適合へのリスクベースアプローチ)」

     

    ステップ3:バリデーション要求事項以外の他の考慮点を確認しましょう!

    明確なプレディケートルール及びバリデーションに特化したガイドライン無しで、ソフトウェアバリデーションの必要性の有無について判断する場合は慎重を要します。食物と機能性食品メーカーは、バリデーションを実施する必要があるのでしょうか?たばこ産業はどうでしょう?医療用大麻の派生品に関係するメーカーもまた、バリデーションに関する疑問を抱いています。

     

    FDAの規制対象クライアントで特定のバリデーション要求事項がなく、バリデーションを実施すべきか否かで頭を悩ませている場合、私は通常彼ら自身のクライアントがバリデーションを要求されているか否かを尋ねます。これは、重要な決定因子となることがあります。

     

    FDAは、Dietary Supplement Health and Education Act(栄養補助食品健康教育法)に基づいて機能性食品業界を規制し、タバコ産業については Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act(家庭内喫煙防止及びタバコ規制法)に基づいて規制しています。どちらの規制にも、GMPに関連する規定が含まれています。こうした企業もバリデーションの実施が必要でしょうか?殆どの企業は、GMPコンプライアンスを確実にするためにソフトウェアバリデーションを実施しないといけないといった思い込みがあります。そして実施することは良いことだと思っています。

     

    同様に、Institutional Review Boards(IRBs 治験審査委員会)や食物メーカーはFDAの管轄権下にいますので、用心するに越したことはなく、ソフトウェアバリデーションの実施は義務となります。IRBsは 21 CFR Part 56 の遵守が義務化されており、食品業界には Food Safety Modernization Act(FSMA 食品安全強化法)が制定されています。

     

    また、調剤薬局は主に州の Board of Pharmacy による規制の対象となりますが、FDAは Drug Quality and Security Act(DQSA 医薬品の品質及び安全性法案)に基づいて「受託機関」の役割を果たす組織に対し監視を行っています。受託機関(outsourcing facility)とは、一定量で混合無菌製剤(Compound Sterile Preparations)を生産する企業を示します。FDAはまた、2012年に発生した汚染医薬品が原因とみられる真菌性髄膜炎の発生等の有害事象の報告を調査しています。この事故により調剤業界がクローズアップされ、ソフトウェアバリデーションを含む、より厳格な品質基準が必要であるとの認識を深めることとなりました。

     

    医療用大麻業界

    業界としての医療用大麻の出現は、比較的新しいと言えるでしょう。特別なタイプのてんかん発作治療薬「エピディオレックス(Epidiolex)」(カンナビジオール)をFDAが近年承認しています。FDAが大麻由来の製剤用原料を含む医薬品を認可したのは初めてです。

     

    この重要なブレークスルーにより、医療用大麻業界への道が開かれることとなったのです。それまでは、業界は社会的信頼を得るという課題を抱え、コンプライアンスは専ら個々の組織に依拠していました。

     

    当事業に携わり、ご自身の会社がライフサイエンス業界に参入する予定である場合には、できる限り早急にベストプラクティスを採用することが、将来的なコンプライアンスの可能性を広げることにつながります。規制の対象となる製造活動及び事業活動をサポートするソフトウェアを使用している場合には、最初からソフトウェアバリデーションのベストプラクティスを準拠することが最善でしょう。

     

    ステップ4:どの程度のバリデーションが必要かを判断しましょう!

    組織でバリデーションを実施することが決定したとしましょう。必然的に、次にどの程度のバリデーションを必要とするかが問われます。不遵守を恐れるがために、全てのシステムに対しバリデーションを実施する企業もあります。逆に、バリデーションをスキップする企業や、単にソフトウェアベンダーのバリデーションのドキュメンテーションを取得し、リスクアセスメントも実施せずに自社のものとして採用してしまう企業も存在します。いずれも極端な例であり、避けた方が良いでしょう。

     

    FDAの規制対象企業の場合、当局が推奨する2つの基本原理を覚えておいて下さい。第一に、最も負担の少ないバリデーション方法を検討することです。次に、バリデーションがシステムの複雑性と使用目的に関連するリスクに相応しているかを確認します。

     

    当社では、クライアントにやみくもに我々のバリデーションドキュメンテーションを採用して欲しいとは考えていません。規制当局からバリデーションの負担を直接的に課せられるのはクライアント自身だからです。彼らは自社ソフトウェアのリスクと、リスクの軽減策を監査機関に説明できなければなりません。

     

    煩雑性の最も低いFDAのアプローチ及びリスクベースバリデーションの推奨事項に基づいて、クライアントには当社のバリデーションドキュメンテーションを導入することを推奨しますが、包括的なリスクアセスメントに従ってご自身で実施していただく必要があります。

     

    当社独自のアプリケーションである MasterControl Validation Excellence Tool(VxT)は、リスクアセスメントの実施に要する時間の大幅削減を実現します。クライアントがソフトウェアのリスクを十二分に把握できるよう、本ツールはリスクの算出に必要なデータを提供します。特に、クライアント依存の特殊なテストが必要な場合には、ご提案が可能です。

     

    まとめ

    ソフトウェアバリデーションに対して確信が持てない場合には、背景にある理論に戻ってみると良いでしょう。なぜ、FDAや他の監査機関はバリデーションを要求しているのか?規制やガイダンスでは、バリデーションによって使用しているソフトウェアが意図した通りに機能していることを確認することができるとしています。つまり、安全対策であり製品品質についての注意事項として用いられているのです。規制対象環境下では、自動化システムに伴うリスクが高ければ高いほど、またシステムが複雑であればあるほど、より多くのバリデーションが要求されます。

     

    これまでの経験から、信頼できるコンプライアンス記録を保持し成功を収めている企業は、高度な品質基準を維持するために、自社とクライアントにソフトウェアバリデーションを実施しています。コンプライアンスに関しては、大部分の企業が後悔するよりは安全のために、願わくは煩雑さを最小限に抑えたアプローチでリスクベースバリデーションを実施したいと考えています。

     

    参照

    (1) Erin Wright, MasterControl’s validation product manager, spearheads the efforts pertaining to the development of the
    company’s groundbreaking Validation Excellence Tool (VxT), which streamlines the risk-assessment process and greatly reduces
    validation time. She created and implemented the configuration-based testing that drives the VxT and developed the formalized
    risk-based approach at the heart of MasterControl’s Validation Excellence methodology.
    (2) Guidance for Industry, Part 11 Electronic Records; Electronic Signatures–Scope and Application.
    (3) From a press release issued by the FDA on June 25, 2018.
    (4) General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff, section 2.3.

    (5) General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff, section 4.8.

     

    本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。


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