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2022-01-21コラム

査察で失敗しない為には?

  • FDA(米国食品医薬品局)の査察や弊社のお客様による監査は、ライフサイエンス業界における経験の中でも、最もストレスの溜まる経験の一つだと思っています。私は、2006年にマスターコントロールに入社する以前は、医療機器メーカーに勤務していた為、査察や監査に関する経験はそれなりに有しています。FDAの査察官は、まるで魔法のように私たちの弱点を見抜き、その点を突いてきます。良いシステムを構築し、コンプライアンスに努力していても、準備が十分ではないことが良くありました。これは、紙運用を行なっていたことが大きな原因ですが、このような問題の多くは、現在のハイブリッド運用や電子システムにも該当します。中でも私が最も心を痛めた経験は、査察の調整役が開発部門の責任者に対して、査察官がある苦情に関連しているインプラントを持ってくるように伝えた際、開発部門の責任者が「どれですか?」と回答したことです。なぜなら、その時点では査察官は1件しか把握していなかったからです。

    私自身が査察を受けたのは15年ほど前のことではありますが、査察がどのようなものか、また、最適なテクノロジーがあることで、「ビフォー・アフター」がどのようになるかをご紹介できればと思っています。


    FDAの方程式

    これを方程式と呼ぶのは少々大袈裟かもしれませんが、あることに対するコンプライアンス対応が、他のことよりも難しいという性質は周知の事実であり、FDAが取り組んでいる内容です。しかし、残念なことですが、査察で最初の一歩を踏み外すと、そこから雪だるま式に事態が悪化していくことがあり、それは、まるで血の匂いを嗅ぎつけたサメのようです。問題の最初の兆候は、査察官が幾つかのロットのDHR(機器履歴簿)を見せて欲しいと行った時から始まります。

    私が医療機器メーカーに所属していた時、この要求は、必然的に紙の記録を探すことを意味していました。バインダーやキャビネット、ストレージボックス、場合によっては資料保管を委託しているベンダーから資料を取り寄せる必要もありました。必死になって紙の記録を探しますが、査察官から要求された場合だと、1分1秒でも遅れたくありません。また、査察官がお腹を空かせているランチ前や、ホテルに帰りたいだろう終了直前に限って、いつも最も時間を費やしてしまっていたような気がします。要求されたDHRが出てこなければ大変になることは分かっていましたし、DHRが見たかったとしても、それが終わりではないことも認識していました。査察官にとっては、そこからが本番であり、DHRを見つけ出すことは、ウォームアップにすぎません。そして、査察官は、記録に対して何らかの署名をした担当者の教育記録を見たがるのです。

    つまり、DHRに関わった全員のイニシャルを解読しなくてはいけないという点もあります。これらの記載は手書きのイニシャルであり、「ここに記載」といった形で決まった場所に書かれているわけでもないです。改訂されたDHRの場合、余白にイニシャルだけが書かれているケースもあり、狭い箇所に書かれている場合などは確認するだけでも大変です。全てのイニシャルの身元が判明したら、次は書庫に戻って教育記録を探すことになるのですが、これはさらに時間がかかります。また、この教育記録を見つけるには、全ての記録がきちんと整理されていることが前提となります。その間にも、時間が経てば経つほど査察官は疑心暗鬼になり、DHRに記載漏れがあったり、誰かの教育記録が見つからない事態が発生すると、所見またはもっと悪いことに繋がる可能性があります。

    最終的に全ての査察が完了した際、その査察にどれだけの時間がかかったでしょうか?このような状況では、紙運用には膨大な機会費用と、悪い結果に繋がる可能性のある大きなリスクが存在しています。もし、貴社の品質管理部門が紙の記録を探すのに何時間も費やしていなかったとしたら、どれだけのことを他に達成することができたでしょうか?走り書きが誰のイニシャルかどうかを確認する為、従業員をラインから引き離さなくてはいけない場合、どれだけ製造に遅延を引き起こしていたでしょうか。査察は数日に渡って実施されますが、紙運用を排除することで時間を節約し、査察官の信頼を高めることに繋がります。


    マスターコントロールとの査察や監査

    電子化を推進することで、査察や監査における様々な課題を解消することができます。マスターコントロールでは規制対象となる製品を開発していない為、FDAの査察はありません。しかし、ISO認証に関連した監査やお客様のコンプライアンスを目的とした監査は定期的に実施されています。このような監査では、常に教育管理が取り上げられますが、これまでに問題となったことはありません。なぜなら、当社の全ての教育記録は統合管理されており、数回クリックするだけで、全ての従業員の教育記録を見つけることが可能だからです。

    MasterControl Mx(Manufacturing Excellence)を使用することで、DHRの問題も解消することができます。判読できないような手書きの記載や余白にあるメモは無くなり、オペレーターはソフトウェアで全ての入力を行うようになります。また、空欄のまま先に進んだり、規格アウトのまま先に進んでしまうことを防止することができます。教育管理もMasterControl Mxと連携している為、オペレーターが教育が未完了の状態でステップを完了することを防止することも可能です。結果として、このソフトウェアにて運用することで、様々な問題の発生防止に繋げることができます。

    査察や監査をさらに容易にすることを目的として取り組んでいる、もう一つの試みがMasterControl Insightsです。Insightsは弊社の新しい分析ツールで、マスターコントロールの全てのデータを統合し、チャートやグラフ、その他のデータを視覚化することで、ビジネスに対する洞察を即座に得ることができます。教育管理を例にすると、ペルソナベースのダッシュボードを通じて、教育が遅延している担当者の把握や、期日超過が近づいている担当者を把握することが可能です。この機能は、ユーザーに対するメールやシステム内のメッセージ、アラートに対する追加の仕組みとして提供され、年末までにはクラウドサービスのお客様に提供される予定です。また、AI(人工知能)を活用した興味深い方法にも取り組んでおり、ソフトウェアに管理されたデータから製造プロセスのボトルネックを特定し、品質イベントでの滞りを改善できる、プロセスの最適化方法を提案する仕組みです。


    まとめ

    GMP:Good Manufacturing Practice(適正製造規範)や他の他の法規制に対応することは、単にコンプライアンスを維持するだけではありません。安全で効果的な製品を提供する為の鍵であり、医療機器に於いては、その製品が命を救うことができる可能性があります。一般的に、企業は規制に準拠する為に最善を尽くしていますが、それを証明するのは簡単ではありません。文書や業務プロセスの管理は、特に紙運用を行なっている場合、膨大なリソースを消費している場合がある一方、そのようなリソース消費は全く効率的ではありません。教育に関する文書やDHRを管理するテクノロジーは全てを連携・連動させ、FDAの査察や取引先からの監査の時でも、必要な時に必要な物をすぐに取り出すことが可能となる為、運に頼るような事態を避けることに繋がるのです。

     

    著者のご紹介
    Matt Lowe

    医療機器のエキスパートであるMatt Loweは、2006年にマスターコントロールに入社し、プロダクトマネージャやシニアバイスプレジデントとして同社に貢献してきました。Ortho Development Corp.やBDの子会社であるBard Access Systemsにて、製品開発と製品管理も担当し、10数台の医療機器の発売に成功しています。また、5つの特許を取得し、1つは現在、申請中です。規制面での経験としては、FDAの510(k)の作成や、整形外科用機器を扱う複数の施設にて、数年にわたって市販後の臨床試験の管理なども経験しています。

    また、同氏は、ユタ大学で機械工学の学士号を取得し、インディアナ大学でMBAを取得しています。

     

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