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2021-10-01コラム

リスクベースの概念を品質分野に導入

  • 規制対象となる製品の開発における課題の多くはリスクに関係しており、市場に展開するまでに検討及び軽減する必要があります。毎年、多くの医薬品や医療機器が回収の対象となっており、設計や開発、製造におけるリスク管理の重要性が浮き彫りになってきています。

    このような規制対象の製品を開発している企業にとって、リスクを管理することは重要です。国際的な規制や基準には製品の安全性やリスク管理などのプロセスがリスク管理要件として盛り込まれている一方、リスク管理の「手法」については企業に委ねられています。下記は、リスク管理の要件として求められるタスクの概要です*¹。

    • リスク特定:収集された情報を用いて、ライフサイクルの各段階における製品の危険性を特定することであり、この情報には、過去のデータや分析、意見、利害関係者の懸念等が含まれます。リスクを特定することは、何が問題となるのか、その可能性はどれくらいか、また、発生した場合の状況という3つの内容を把握することができます。
    • リスク分析:特定された危険性に関係するリスク及び想定される状況に対する評価を行います。また、必要に応じて、その危険性が発生する確率とレベルの紐付けを定性的または定量的なプロセスを用いて行います。
    • リスク評価:特定及び分析されたリスクに対して、予め用意された基準との比較を行います。リスク特定時に策定した3つのポイント(内容、可能性、結果)についても検討を行います。
    • リスク受容:リスク分析の結果に基づいて、定量的な推定値または範囲としての定性的な説明で設定します。定量的に設定する場合は確率に関連する数値を用い、患者に対する安全性や品質への影響を定性的な説明で表現する場合は、「低:軽微な影響、中:中程度の影響、高:深刻な影響」のように、可能な限り、詳細に定義する必要があります。
    • リスクコントロール:許容できるレベルまでリスクを低減するプロセスです。重要性と重大度に比例する形で、リソースの配分を行います。
    • リスクレビュー:品質リスクマネジメントのプロセスが完了後も、決定事項に影響を与える可能性のある他の事象に対して、プロセスを継続的に適用すべきです。この事象には、計画的(製品レビューや査察、監査、変更管理の結果)や計画外(不具合に対する原因調査や回収など)のケースが含まれます。


    リスクマネジメントに関わるタスクは、対象となる製品やプロセスの内容に応じて、より詳細な内容になります。また、最低限の規制要件を満たすだけでは、効果的なリスクマネジメントにはならず、継続的で再現可能なプロセスである必要があります。リスクマネジメントとは、逸脱や不適合、遅延、回収を発生させる可能性のある行動や傾向を監視可能する為、組織化されテクノロジーを活用したアプローチであるべきです。

    規格外(OOS)や逸脱、期限超過したデータ、設計上の課題等といった製造の課題は、より大きなリスクの一部分として見逃されがちです。また、製品ライフサイクルの初期段階では見過ごされていた、もしくは、未知の危険性があるケースもあり、それらを監視する必要もあります。しかし、リスクマネジメントは、品質担当だけの責務ではなく、組織全体に組み入れられるべきです。その為、効果的なリスクマネジメントのアプローチとして、品質を様々な業務プロセスに組み入れることと、テクノロジーを活用した電子化を通じて、リスクベースの考え方を組織全体に根付かせる必要があります。

    FDA(米国食品医薬品局)は、製品の品質と安全性の向上の為に、近代化された技術を活用することを長年に渡って、提唱してきました。

    「AIや機械学習などの高度な分析ツールは、FDAの予測能力の強化に貢献し、製品の潜在的な安全性の問題を発見することができます。リスクの優先度を設定する最新の手法を採用することにより、査察や他の業務をより効果的に実行することができます。」*²

    元FDA長官
    Steven Hahn

    このような包括的なリスクマネジメントの導入を成功させるには、全ての関係者がリアルタイムでデータにアクセスし、共有できることが必要であり、これを実現することで、リスクのデータに対して効果的にトラッキングや傾向分析を行うことができます。一方で、このようなレベルで連携や効率性、スピードを実現するのは、表計算ソフトでの収集や分析、紙運用では、現実的ではありません。

    テクノロジーを活用してリスクを積極的に監視及び管理することは、当局への対応を削減することに繋がり、より早い承認及び市場展開に繋げることができます。様々なデータ連携が可能で品質に特化したプラットフォームを導入することで、品質に関わる全てのプロセスを場所を問わず管理することが可能となり、統合管理されたリスクマネジメントのプラットフォームを構築することができます。

    リスクベースの概念や2021年の品質やコンプライアンスのトレンドは、「Shaping the Next Normal for Quality and Compliance(法規制対応や品質のニューノーマルを形成する物とは)」をご覧ください。


    参照

    1. Quality Risk Management ICH Q9,” Pharmaceutical Updates, Nov. 5, 2020.
    2. Statement by Stephen Hahn, M.D. Commissioner of Food and Drugs, Food and Drug Administration Before the Subcommittee on Agriculture, Rural Development, Food and Drug Administration, and Related Agencies Committee on Appropriations, U.S. House of Representatives,” Mar. 11, 2020.

     

    著者のご紹介
    David Jensen

    Westminister CollegeにてProfessional Communication、Weber State UniversityにてCommunicationの学位を取得後、Medical Product OutsourcingやBio Utahなどの媒体における執筆者として、長年従事し、現在はマスターコントロールのContent Marketing Specialistとして、Webサイトやホワイトペーパー、ブログ等に掲載される記事の執筆を担当しています。

     

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