新着情報

新着情報

マスターコントロールからのお知らせです。

2021-05-06コラム

個別化医療におけるCMOのビジネスチャンスの拡大

  • 成長を続ける個別化医療は、製造や開発受託機関(CMOおよびCDMO)にとって大きなビジネスチャンスです。


    需要の急激な増加

    毎年、Personalized Medicine Coalition(国際個別化医療学会)は、FDA(米国食品医薬品局)の管轄する個別化医療に関する報告を行なっています。そして、ここ数年の同学会の調査結果は、個別化医療の需要が大きく増加していることを示しています。

    • 2005年にFDA(米国食品医薬品局)で承認した医薬品の中で、個別化医療が占める割合はわずか5%
    • 2020年にFDAで承認した医薬品の中で、個別化医療が占める割合は39%
    • 2017年から2020年のうち3年間は、個別化医療が新薬の30%以上を占めている


    大手企業の参入

    Contract Pharma誌は、この成長はCGT(細胞及び遺伝子治療)の発展が影響していると述べています。同市場の今後の展望が魅力的であることから、規模を問わず、多くの製薬会社がCGTに投資しており、スイスの製薬大手ロッシュ社はスパーク・セラピューティックス社を43億ドル(約4300億円)で買収、サレプタ社とは10億ドル(約1000億円)でライセンス契約を締結しました。その結果、CGTに対する受託サービスに対する需要も増加してきています。

    一部の製薬会社ではCDMOに対するM&Aを行ったり、この機会を通じて、製造委託に対する依存を高める決定を行った大手企業もあります。サムソン・バイオロジクス社は、2020年、韓国国内に20億ドル規模(約2000億円)のバイオ医薬品の製造施設を建設すると発表しました。同社は既にブリストル・マイヤーズ スクイブ社やロッシュ社などの大手製薬会社向けにバイオ医薬品を製造しており、この施設が完成すると、世界のバイオ医薬品向けCMOの製造能力の1/3を担うことになります。


    受託製造に対するニーズの拡大

    個別化医療の需要拡大により、多くの企業が投資を拡大する傾向にある一方、CGT領域における受託製造業者は不足している傾向にあります。ここ最近、CDMOとして新規参入したCenter for Breakthrough Medicines社の創設者兼専務取締役を務められているAudrey Greenberg氏は、複雑な分子構造を伴う製造は需要の1/5程度しか供給できていないと述べています。

    「既に362個もの細胞・遺伝子治療薬が開発段階にあり、承認申請を取得後は、製造規模の拡大が求められます。」


    競争と対応、そして、拡張

    BioPlan社が実施した調査でも、この不足は5年後には50倍になると予測されており、この需要を満たす為には現在の50倍の生産能力が必要になります。

    CMOやCDMOとして個別化医療に参入するには、資金力だけではなく、市場の変化に適応する能力、つまり柔軟性が必要となります。

    Pharma & Biopharma Outsourcing Association(PBOA)の創設者であり、代表取締役を務められているGil Roth氏は、 2020 CPhi Festival of Pharmaにて、「The Future of Drug Manufacturing(医薬品製造の未来)」と題した基調講演を行い、個別化医療は受託製造機関が注目すべきトレンドの一つであり、適応力の重要性について、述べられました。

    「少数の患者様向けの医薬品を供給することは、ビジネスモデルや製造要件に柔軟に対応する必要があり、小ロットで生産し、患者様に短時間で提供できる生産能力や設備が必要となります。CDMOは、このようなニーズに対応するため尽力しており、スピーディーで高品質な対応が可能な企業にビジネスの機会が生まれています。」

    柔軟性や拡張性はソフトウェアで実現することが可能であり、より多くの受託製造機関も気付き始めています。また、CPhi Festival of Pharmaでも、この点に関するお話がいくつかありました。

    「現在、患者数の多い疾患領域の需要を満たすには、供給体制が十分とは言えません。拡張性を考慮したアプローチが必要であり、例えば、細胞治療の検査には、結果が出るまでの時間や必要なサンプル量など、いくつかの課題があることが分かっています。その為、遺伝子治療の提供が可能なプラットフォーム・アプローチに移行するCDMOが増えてきています。」

    Steve Pincus氏
    Head of Innovation
    Fujifilm Diosynth Biotechnologies


    CMOやCDMOとの提携により、高度な製造技術を現実的な費用感で利用することが可能になる一方、委託元企業に対して、可視性を提供しながら品質やスピードを維持することがCMOやCDMOにも求められており、ロットの規模を問わず、必要に応じて迅速に拡張・調整できる最新のテクノロジーも必要です。個別化医療においては、柔軟性が市場における最大の差別化ポイントとなるため、CMOやCDMOには迅速な対応を求められています。


COPYRIGHT © MasterControl K.K. ALL RIGHTS RESERVED.